研究概要 |
Vesl-1S/Homer-laタンパク質の細胞内局在化制御機構の解析:LTPに伴い発現誘導されるVesl-1Sタンパク質はグループI代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR1/5)やシナプス後タンパク質Shankと相互作用するドメインを持つ。一方誘導されたmRNAは神経細胞体でのみ検出され、樹状突起では観察されない。このことはVesl-1Sタンパク質が何らかの制御を受けてシナプス部位に局在化する可能性を示唆する。私どもは海馬初代培養細胞を抗Vesl-1S抗体で免疫細胞染色することにより、Vesl-1Sの細胞内局在を検討したところ、常態では細胞質内に比較的拡散的に存在するVesl-1Sの免疫シグナル(Vesl-1S IR)がphorbol esterの刺激によりシナプス後領域に蓄積することを見出し報告した。さらにphorbol esterによるシナプス領域でのVesl-1S IRの蓄積を阻害する薬剤を探索したところ、MEK阻害剤であるPD98059を見出した。さらに内在性のMAP kinase活性化因子であるBDNFの投与により、Vesl-1Sはシナプス領域に蓄積することを明らかにした。Phorbol esterまたはBDNFの投与により活性型のMAP kinase(リン酸化MAP kinase)の量が増加していることを見出した。このことはMAP kinaseカスケードが活性化されることによりVesl-1S IRはシナプス領域に蓄積することを示している。Vesl-1Sのシナプス領域への蓄積はタンパク質の新規合成非依存的に生じること、その際Vesl-1Sのタンパク質量は増加していないことからVesl-1S IRのシナプス部位への蓄積は翻訳後に生じていることを示唆する。 Vesl-1Sの分解制御機構の解析: Vesl-1Sは他の構成的に発現している類縁タンパク質Vesl-1L, Vesl-2, Vesl-3とは異なり、ユビキチンプロテアソーム系により分解されており、分解に必要な領域はVesl-1S特異的なC末端11アミノ酸であることを明らかにした。さらにユビキチンプロテアソーム系をMG132, lactacystinで阻害することによりVes1-1S IRはシナプス部位に蓄積することを明らかにした。 てんかんモデルマウスにおけるVesl-1SmRNAの誘導:てんかんのモデルマウスとして知られているElマウスにおいて、痙攣発作後1-3時間後にVesl-1S mRNAの誘導が観察された。
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