研究概要 |
本研究の目的は、生体組織のin-vivo局所弾性率(剛性率)を計測する手法を確立することである。今年度は昨年度開発した局所波長計測手法を用いて,2種類の弾性率から成るゲルファントム(弾性模型)やin-vivoおよびin-vitro生体組織のMRE画像から局所弾性率を求める実験をした。 MRE法は、撮影時に弾性体に対して外部振動を加えることで内部に発生する弾性波を画像化するものである。この時、弾性体の粘性の影響を避けるために低周波領域の外部振動周波数を用いるため、伝搬する弾性波の波長は長くなる。またMRE画像から正確な弾性率を求めるためには、境界面などで発生する反射波の影響を避ける必要があるため、局所弾性率測定に利用可能な波形データは1波長以下になることが多い。そこで実際に得られたMRE画像に対して昨年度本研究で開発した局所波長計測手法を適用することで局所弾性率を求めた。 弾性率の異なるゲルを2層に重ねたファントムをMRE撮影システムを用いて撮影し、得られたき画像から計測した局所剛性率は、物理計測装置で計測した値とよく一致した。また、豚の摘出肝とin-vivoにおける人体の腓腹筋のMRE画像から局所剛性率を求めたところ、それぞれ10.6(SD=2.8)kPa、5.1(SD=0.9)kPaとなった。これらの値は従来研究により報告されている剛性率の範囲(5〜77kPa)におさまった。 以上の結果より、本研究で提案した局所弾性率計測手法は生体組織を対象とした場合にも有効であることを示すことができた。
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