研究概要 |
生体活性ビニルシラン系ハイブリッド ビニル基を含む各種アルコキシシラン化合物から,ポリエチレン型の有機鎖を骨格として末端にシラノール基を保持した分岐構造型ハイブリッドが合成できた。ビニルトリメトキシシラン(VTMS ; CH_2=CH-Si(OCH_3)_3)と酢酸カルシウムの混合比が1:0.05(mol)の溶液から導かれたハイブリッドは,擬似体液浸漬後ほぼ1日間でアパタイトを析出しはじめ,3日間で材料全面を覆った。この前駆体ゾルをディップコーティング法でナイロン【○!R】基板上に展開すると,生体活性ハイブリッド皮膜が得られた。γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(γ-MPS ; CH_2=CCH_3COO(CH_2)_3) -Si(OCH_3)_3を出発原料とする有機無機ハイブリッドも生体活性であった。また,第三成分を混合して機械的特性の調整も可能であるほか,メチルメタクリレートとVTSMとのブレンド重合体にCa^<2+>を含有させたハイブリッドも生体活性を示した。各種材料の^<29>SiMASNMR測定によると,Si原子周囲の酸素原子の2つが架橋しているピーク(T^2)が多く存在しており,体液環境下で材料表面にSi-OHが多数生成し,生体活性を発現したと推察される。 アルコキシシランのグラフティングによる高分子の生体活性化 各種高分子基板表面にラジカルを発生させ,上記ビニルシラン分子をグラフト重合させた後,加水分解すれば,高分子表面に生体活性なハイブリッド表面層が生成できることが明らかになった。乳化重合のプロセスに従い,VTMSまたはγ-MPSをグラフトさせたポリ塩化ビニル,ナイロン,ポリエチレン,シリコーンなどの高分子基板上には,擬似体液中で期待どおりアパタイト層が析出した。以上の結果から,高分子表面にグラフト化されたアルコキシシランも,加水分解されシラノール基を生成すれば,体液環境下でアパタイトを析出する能力を有していることが明らかとなった。
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