本研究は、音速や減衰定数に比較してより基本的な物理量である弾性定数と密度を音速((弾性定数/密度)の平方根)と固有音響インピーダンス((弾性定数/密度)の平方根)を同時に測定することによって算出し、骨の診断を行うシステムの開発を目指して行ったものである。 本年度は、昨年度に改良を行った漏洩表面擬似縦波速度測定システムに固有音響インピーダンス測定システムを組み込んで密度と弾性定数の計測システムを構成した。また、装置の再現性などを評価して改良を行った。 1.密度と弾性定数の測定実験 漏洩表面擬似縦波による音速測定と縦波による固有音響インピーダンス測定を組み合わせて、密度と弾性定数を計測するシステムを構成した。 2.装置の評価と改良 固体試料について音速等の計測を行い、装置の再現性などを評価した。その結果、従来システムによる計測値との間に差が生じたため原因を検討し改良を行った。まず位相測定を安定させるため、90度移相器に替えて安定した直交出力が可能な発振器を導入した。また種々の固体試料についての計測結果について比較検討したところ、試料の音速測定値の比は試料によらずほぼ一致しており、何らかの基準試料を用いて補正できる可能性を見出した。ヒトの骨について非侵襲計測を行った結果は、固体試料の場合に比べてばらつきが大きく、骨の表面に対する超音波送受信部の距離や角度の調整を短時間にかつ正確に行うためのシステム、調整されていることを確認するためのシステムが必要であることが明らかとなった。
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