研究概要 |
1.脳波計・A/D変換器・コンピュータ・音声出力装置から構成される,聴覚刺激システムを製作した.これを用いて,5種類の単語「はい・いいえ・ありがとう・さようなら・こんにちは」または5種類の母音「あ・い・う・え・お」をランダムに提示し,その中から一つの単語または母音を選択させる実験を行った. 2.脳波からP300を判定するためのアルゴリズムを開発した.すなわち,中心周波数3Hzのバンドパスフィルタ,アベレージング平均波形減算処理,窓関数による波形の切り出し処理を施して得られる波形から,正の最大のピーク値と面積によるスコアを計算し,P300を判定する方法を開発した. 3.刺激の提示間隔と回数をさまざまに変えて実験を繰り返し,刺激の提示間隔1秒,1回の実験で刺激を提示する回数は125回のときに最も良好な結果を得た. ほとんどの被験者において単語を用いるよりも母音を用いた方が高い正解率を示した.後者の刺激の方が,P300のピーク値が大きく,潜時のばらつきも小さい傾向が見られる.これは,音声刺激の長さがP300成分の出現に影響を及ぼすことを示している.しかしながら,母音刺激においても潜時のばらつきは大きく,正解率は最高6割程度にとどまった.視覚刺激に対する正解率が最高9割程度であることを考えると,実用的な水準とは言えない.意志伝達補助装置に聴覚刺激を利用するためには,潜時パターンを発見し,P300判定アルゴリズムを改良する必要がある.
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