研究概要 |
ラット大腿骨に作成した横骨折を仮骨モデルとしてその骨癒合経過を3点曲げ力学試験により追跡した.仮骨の力学的特性を非侵襲的方法にモニタリングする検査法としての可能性を1)局所的骨密度測定,2)超音波検査,3)AE検査の3つについて検討した.pQCT法で測定した仮骨領域の骨密度パラメータのうち,total BMC・total BMD・corical BMC・cortical BMD・polar SSIは仮骨の曲げ強度と有意な正の相関を示した.超音波検査法では骨折断端部が測定領域と近接するため仮骨のみの定量的評価自体が困難であった.AE検査法では,力学試験中にAE信号が測定されはじめる荷重量(降伏強度)が仮骨の曲げ強度と極めて高い正の一次相関を示した.目的変量である仮骨強度を非侵襲検査法の各種パラメータを説明変量として定義する場合,降伏強度と仮骨強度の相関が他のパラメータに比べて極めて強いため実用的にはAE検査法のみで十分という結果を得た. この結果を踏まえて,創外固定法による仮骨延長症例に対して創外固定器の抜釘時期(延長仮骨の骨化完成時期)を評価した.仮骨の降伏強度は原疾患の種類に関わらず術後の経過日数とともに有意に増加した.重回帰分析の結果,仮骨延長距離と患者の年齢に延長仮骨の成熟期間が有意な相関を示すことが明らかとなった.これは,必要とする延長量と患者の年齢(ともに既知)から総治療期間を推定できることを意味する. また,創外固定法により治療した骨折症例においてもAE法により測定した仮骨の降伏強度は治療の時間的経過にともなって増加した.基礎実験から得られた回帰式に降伏強度を代入することで仮骨強度を推定することが可能であり,これまで主観的にしか評価できなかった骨癒合モニタリングを科学的に行えることが明らかになった.
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