研究概要 |
近年交通事故による脊髄損傷,脳出血・脳梗塞による脳卒やなどが原因で起こる中枢神経麻痺による障害が増加している.これらの障害では末梢神経や筋肉が正常である場合が多い.そこで,末梢神経や筋肉に電気刺激を与えて,歩行を再建する試みがなされているが,従来は大掛かりな装置と専従のオペレータを必要とした.また,あらかじめプログラムされた刺激しかできなかったので,長時間にわたって筋肉に電気刺激を与えた時の筋疲労により,同じ強度の電気刺激を与えても筋肉の収縮力が変わってきてしまった場合には対応ができなかった. そこで,今回われわれは筋疲労をモニターしながら電気刺激を与えることのできる小型で使用が容易な電気刺激装置を試作することにした(平成12年度).さらに,装置をスポーツ用膝サポータに収まる大きさまで小型化し,患者のズボンやスカートに隠すことができるようにした.装置は従来必要であったの商用電力を必要とせず,9Vの乾電池1本で十分な電気刺激ができるようにした(平成13年度). 平成14年度は足関節の背屈には至らないが,前脛骨筋に微弱な筋放電を認める患者に対し,筋電を取得したときにその振幅に応じて刺激の強さを変化させる刺激装置を試作し,臨床に供した.装置の大きさは10x6x2cmで単3乾電池3本で稼動するようにした. 電極を織り込んだ膝用サポータを作り,上肢が健常ならば患者自身で容易にとりつけられるようにした.本装置は膝用サポータの外側にポケットを付け,その中に入れた. 電極は腓骨神経直上の皮膚上と前脛骨筋の筋腹直上の皮膚に自動的に装着される.前脛筋から微弱な筋放電が観測された時に遊脚期と判断し,前脛骨筋に刺激を与えて,足関節を背屈させた. 今後さらに本装置の有用な患者を抽出して臨床実験を重ね,装置の改良を進める予定である.
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