研究概要 |
今回,我々は退院後のQOLを検討する観点から能力評価にFunctional Independence Measure(以下FIM)とQOLにShort Form 36(以下SF-36),また,Self-rating Depression Scale日本語版(以下SDS)を用いて検討した。対象は初回急性期発症症例で,自宅退院した症例とした。再発作,病前に著しい運動障害を有するもの,透析などの慢性疾患を有するもの,失語症を有するもの,質問の答えられないものは除外した。SF-36は年齢別国民標準値による偏差得点を用いて下位項目(PF(身体機能),RP(日常役割機能(身体)),BP(身体の痛み),GH(全体的健康観),VT(活力),SF(社会生活機能),RE(日常役割機能(精神)),MH(心の健康))ごとに評価した。協力の得られた症例は63例。退院時54例,1ヶ月時42例,3か月時38例、6か月時32例であった。また,経済生産活動の高い64歳以下と65歳以上に分け比較検討した。63症例のうち退院時から退院後6ヶ月まで全経過を追えたのは23例であった。これらの症例に関して経時的な変化について検討した。退院後6ヶ月目までFIMは有意差を認めず,得点も高くADLが自立している症例であった。若年群と老年群では特に退院時と退院1ヶ月でSF-36に有意差を認め,若年群で低い傾向があった。SDSとSF-36はPF以外の項目で相関を認め,特にRP, VT, MHは各時点で相関を認めた。全経過を追えた23例について時系列でみた場合にPFにおいて経時的に変化が統計上退院後6ヶ月と他の時期との間に有意差があった。以上からSF-36の評価はSDSではあきらかにしにくい心理的活動性に関してと,ADLの比較的困難な項目,更衣,入浴を含み,経時的評価を長期的に行うことの有用性が考えられた。
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