研究概要 |
1.凍結神経片を用いた同種神経移植後の機能回復 同種凍結神経移植法における機能回復の程度を調べる目的で,ラットを用いて同種凍結神経移植を行った。その結果,浅部痛覚は移植後5〜6週目より出現し,平均110日目には回復が認められた。運動機能回復の指標としたsciatic function indexに関しては,個体のばらつきが大きく,客観的評価に用いることは困難であると考えられた。 2.成熟ラットのシュワン細胞の培養法 軸索の再生に大きな役割を果たしているシュワン細胞の培養法に関して4種類の方法を試み,比較・検討した。その結果,Calderon-Martinezらが報告した生体におけるシュワン細胞の増殖刺激を必要としない神経片の培養法を行うことによって最も良好な成績が得られた。 3.ビーグル成犬のシュワン細胞の培養法 ラットで成功したシュワン細胞培養法がビーグル成犬においても可能か否かを検討した。その結果,Calderon-Martinezらの方法によって全体の細胞に対しておよそ90%の割合でシュワン細胞を得ることができた。 4.凍結神経移植片と培養シュワン細胞の併用法 同種凍結神経移植法と培養シュワン細胞の併用について,共培養および神経片への直接的培養細胞注入の2種類の方法を用いて検討した。その結果,共培養では神経片の内部にはシュワン細胞は認められなかった。シュワン細胞を直接注入した神経片では,神経片の中にシュワン細胞と考えられる核や細胞質の明確な細胞が多数生存していることが確認された。 本研究では,ラットを用いた基礎的検討によって同種凍結神経移植法が感覚機能の回復に有用であること,成熟動物のシュワン細胞培養が可能であることが確認された。さらに,シュワン細胞の培養法が成犬においても可能であること,培養シュワン細胞を併用するためには移植片への直接注入が有効であることが明らかとなった。
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