研究概要 |
ミクロの構成要素からなる系がマクロにおいて見事な造形を見せ,生き生きとした動きを呈し,複雑多様な自然を生み出している。そこには様々な階層構造と運動が潜んでおり、それを理解する新しい方法論や概念を構築することは重要な課題である。そのアプローチとして「非線形大自由度力学系が持つ不変多様体の階層構造に着目し,そこで発生する間欠的運動を理論的・数値的に解明すること」を目指した。 1)大自由度系カオスの複雑な挙動を捉える立脚点として,既に我々が研究を始めていた不変多様体とその周りのOn-off間欠性をおき,大自由度カオスの複雑な挙動(カオス的遍歴)が不変多様体近傍間の飛び移り運動にあることを明らかにし,それが統計的粗視化で露わになることを明らかにした。 2)1)の基礎となるOn-off間欠性の性質は,主に摂動論(線形展開)で議論されてきたが,非摂動論的に取り扱うことによって新たな知見を得た。 3)大自由度系では非カオス(静止・周期・準周期運動)のアトラクターが多数(システムサイズの増加に伴いアトラクター数が急激に増大する)存在することがある。その特性を特にノイズに対する応答の視点から研究し,「十分小さなノイズがアトラクターを繋ぎ,アトラクター間の間欠的挙動を引き起こす」ことを明らかにした。また,その運動がマクロな物理量における異常拡散という形で記述できることを見いだした。 4)散逸系カオスに限らず,保存系カオスにおける間欠的挙動と低次元の不変構造の関係を明らかにした。 5)上記の大自由度力学系の挙動に関する研究の先には,より複雑な振る舞いに対するアプローチを展開できる。ここでは,「一般化シフト写像の挙動を異常拡散で捉える研究」,「脳波時系列の解析」,「火山時系列の解析」,「不変多様体の中に不変多様体がという階層構造を伴う力学系の複雑な挙動に対する研究」に着手した。
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