研究概要 |
硫酸化は、生体内において広く生体外異物や薬物の解毒代謝として重要な機能を持つ。近年、野生動物の生殖および生態上の変異、ヒトにおける精子数の減少などについて報告され、「内分泌かく乱物質」(環境ホルモン)の影響が指摘されるようになってきた。このような背景から、硫酸化は「内分泌かく乱物質」の生体内代謝機構に何らかの役割を持つ可能性が考えられる。そこで合成「内分泌かく乱物質」および植物由来の「内分泌かく乱物質」疑わしき化合物を用いて、ヒト硫酸転移酵素および培養細胞を用いて、「内分泌かく乱物質」の硫酸化による生体内代謝の重要性を検討した。 ヒト硫酸転移酵素としてP-PST, M-PST, SULT1B, SULT1C#1, SULT1C#2, DHEA STの6種は大腸菌によるリコンビナント酵素を作製し、実験に使用した。ESTはバキュウロウイルスにより発現させた昆虫細胞の細胞質を使用した。基質として「内分泌かく乱物質」候補物質であるビスフェノールA、アルキルフェノール類、合成エストロゲンおよび植物由来のイソフラボンなどを使用した。 その結果、これらの「内分泌かく乱物質」が種々の硫酸転移酵素により硫酸化されることが判明した。HepG2細胞を使った代謝ラベル実験より「内分泌かく乱物質」は培養細胞系でも細胞内に取り込まれ硫酸化による代謝を受け、培地中に放出されることを明らかとした。されに「内分泌かく乱物質」の硫酸体は再度細胞に取り込まれることはなぐ最終代謝産物として体外に排泄されるであろうことが示唆された。一方、イソフラボン類も効率よく硫酸化された。イソフラボンのKm値はダイゼインとグリシテインでそれぞれ1.28μMと0.22μMであった。競合試験の結果、これらの化合物はエストロゲンの硫酸化を阻害した。これらの化合物はエストロゲンの硫酸化を競争的あるいは選択的に阻害し、その結果イソフラボンはエストロゲンの体内濃度を上昇させ女性の更年期障害や骨粗鬆症の改善をすることが示唆された。
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