研究課題/領域番号 |
12836017
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究機関 | (財)佐々木研究所 |
研究代表者 |
吉田 緑 (財)佐々木研究所, 病理部, 研究員 (70201861)
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研究分担者 |
高橋 正一 (財)佐々木研究所, 病理部, 主任研究員 (50132767)
前川 昭彦 (財)佐々木研究所, 病理部, 部長 (30106182)
安藤 進 (財)佐々木研究所, 病理部, 研究員 (10240433)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2001年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2000年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 内分泌撹乱化学物質 / p-tert-octylphenol / 雌性生殖器 / 子宮癌 / 新生仔期曝露 / 成熟期曝露 / エストロゲンレセプターα / ラット / p-tert octylphenol / 成熟後曝露 |
研究概要 |
エストロゲン様作用を示す内分泌撹乱化学物質(EDCs)と子宮癌への関連性とその発生機序を解明するために以下の実験を行った。EDCsとしてp-tert-octylphenol(OP)を選択した。 1.p-tert-octylphenol(OP)の成熟および新生仔期大量曝露によるラット子宮癌への修飾作用[平成12年度] 正常な性周期を示す成熟Donryuラットの子宮腔内に発癌剤を経膣的に投与し、その後大量のOP(100mg/kg)を65週齢まで皮下投与した結果、本系統に自然発生する高分化型の腺癌の発生頻度が有意に増加した。また、成熟動物と同量のOPを生後1〜15日齢の同系統ラットに隔日皮下投与し、その後10週齢で発癌剤を同様に投与して65週齢まで観察した結果、子宮内膜腺癌の頻度は対照群と同様で、むしろ過形成病変が減少したが、中〜低分化型子宮癌および腹腔内あるいは肺への遠隔転移が有意に増加するなど明らかな悪性度の亢進が認められた。 2.新生仔期OP大量曝露による子宮の変化とER発現の経時的変化について[平成13年度] 0P新生仔期大量曝露による子宮内膜の変化を6日齢から性成熟前まで観察した。その結果、OP新生仔期大量曝露は視床下部・下垂体へ影響を及ぼし、成熟前のゴナドトロピン分泌を明らかに抑制し雄型の分泌パターンを示した。これらの動物では、排卵は行われず黄体のない多嚢胞性卵胞から成る萎縮性の卵巣となり、相対的エストロゲン値が増加した結果、持続発情および8週齢で既に子宮内膜の過形成が観察された。一方、性成熟前より子宮腺の形成が顕著に抑制され、子宮被覆上皮および間質細胞のエストロゲンレセプターα(ER)および細胞増殖活性の異常が認められたことから、OPの新生仔期大量曝露与は、直接的に子宮内膜上皮の発育分化異常をもたらすことが示唆された。 3.子宮の増殖性病変部におけるER発現の経時的変化について[平成13年度] 加齢に伴うラットの子宮増殖性病変部におけるERαの発現および細胞増殖活性について免疫組織化学染色法を用いて検索した結果上皮の過形成から高分化型腺癌へと進展するにつれ、ERの発現および細胞増殖活性は亢進したが腺癌の分化度が低いものではホルモン非依存性癌であることが明らかとなった。 これらの結果より、成熟動物での子宮癌の増加は持続的なOP投与がエストロゲン様作用として子宮の増殖活性を亢進させた結果であると考えられた。一方、新生仔期曝露による子宮癌の増加は、視床下部・下垂体・性腺系障害による相対的エストロゲン値の増加と子宮の発育分化異常が関連していると考えられ、曝露時期により子宮癌の発生機序が異なる可能性が示唆された。しかし、いずれも極めで大量を皮下投与した結果あることから、環境中に存在する量では子宮癌を修飾させる可能性は極めて低いと考えられた。
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