研究概要 |
本研究では、トレハロース誘導体の酵素反応による新規な合成方法の開発と、これらの誘導体のトレハラーゼ阻害に起因する殺虫剤ならびに抗真菌剤への序用の可能性を検討することを目的としている。本研究では、申請者が独自に保有する糖類脱水素酵素(G3DH)を中心とした酵素合成法により、新たなトレハロース誘導体の合成方法を確立するとともに、それらのトレハラーゼ阻害剤としての評価を行ない抗真菌剤ならびに殺虫剤への応用の可能性を検討した。 昨年度の研究で、特にトレハラーゼ阻害剤として有効なトレハロース誘導体、3,3'-ジケトトレハロースの効率的な生産方法を目指して、微生物による生産方法を検討した。 Halomonas sp. a-15株細胞を調製し、その溶存酸素存在下での呼吸鎖とG3DHを共役させた反応により、3,3'-ジケトトレハロースを効率的に微生物変換法で合成する方法を検討した。しかしその生産効率は悪く、その理由はHalomonas sp. α-15株がトレハラーゼも有しており、トレハラーゼによるトレハロース加水分解速度がG3DHが3,3-ジケトトレハロースを合成する速度よりも速いため、生産の途中でグルコースに変換されてしまったと考えられた。従って微生物変換法ではなく、酵素法で3,3'-ジケトトレハロースを生産することとした。G3DHを用いた酵素合成法は電子受容体としてフェリシアン化カリウムを用いることにより容易に反応を進行させることができ、3,3'-ジケトトレハロースの生産が可能となった。また、精製度の高いG3DHを用いることにより副産物の生成は見られず、その収率は80%以上という高収率で得られることが示された。 3,3-ジケトトレハロースは抗真菌活性は示さなかったが、トレハラーゼ阻害剤であり単純な酵素反応で効率よく合成でき、誘導体を安価に供給できることから、農薬あるいは防疫薬として産業界に提供できると期待される。
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