研究概要 |
【新規水溶性光学活性触媒の合成】 (1)α,α-トレハロースの一方のピラノシル骨格の2位炭素と3位水酸基にジフェニルホスフィンが結合したホスフィン-ホスフィニトを合成した。さらに,この配位子とロジウム錯体からキレート型錯体とした後,HBF_4で処理することで水酸基を合計5つ有する光学活性水溶性ホスフィン-ホスフィニト-ロジウム錯体へと変換できた。 (2)α,α-トレハロースの4,6:2^1,3^1:4^1,6^1をシクロヘキシリデン基で選択的に保護し,Ph_2PC1との反応でトレハロースの2,3位の酸素原子にジフェニルホスフィンが結合したジホスフィニトを合成した。さらに,このジホスフィニトとイリジウムとの錯体を合成した後,HBF_4で処理し,シクロヘキシリデン基をすべて脱保護して光学活性水溶性ジホスフィニト-イリジウム錯体を合成することができた。 【触媒的不斉反応への応用】 (1)水溶性ホスフィン-ホスフィニト-ロジウム錯体触媒によるエナミド類の水溶媒中での不斉水素化反応を行った。70気圧の水素圧を必要とするが,反応は効率良く進行し,70%の不斉収率でα-アミノ酸誘導体が得られた。この触媒を使用した反応では常に非天然型のアミノ酸誘導体が優先的に得られる。以前報告した,ジホスフィニト-ロジウム触媒が天然型のアミノ酸誘導体を与えることと対照的である。本触媒を用いる利点は,反応後デカンテーションにより分離した触媒を含む水相が触媒活性を保ったまま再利用できることにより示された。 (2)光学活性水溶性ジホスフィニト-イリジウム錯体がイミン類の触媒的不斉水素化に有効であることを示した。反応は水溶媒中より1,2-ジクロロエタン中で良好に進行した。
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