研究概要 |
広島湾から採取した汚泥を用い,酢酸ナトリウムを単一炭素源とし、NaClを添加した培地で集積培養を行ったところ,9%NaClにおいてもメタン生成がみられた。これらメタン生成菌群のメタン生成能に及ぼす最適pH、温度を調べたところ、pH6.3-7.0、37℃であった。16S rDNA、シークエンスより,集積された酢酸資化メタン生成菌はMethanosaeta concilii DSM3013と90%の相同性を示した。このことからこの酢酸資化メタン生成菌がMethanosaeta属と比較的近縁種ではあるが、これまでに単離されていない全くの新種である可能性が示唆された。海洋汚泥に強い食塩耐性を持つメタン菌の存在が確認されたことから,UASBリアクターを用い酢酸資化メタン生成菌を3%NaCl存在下で集積培養したところ,約100mmol/l/dのメタン生成速度が得られた。そこで,広島湾湾岸部に堆積する汚泥に含まれる有機物分解・酢酸生成槽と,本メタン発酵槽とを連結した2槽式システムを構築し,汚泥処理を行ったところ,わずか4日の処理により汚泥浄化が可能であった。さらに,海洋汚泥を用いて3%食塩存在下,37℃での醤油粕の回分式嫌気消化処理を行ったところ,1ヶ月で約15%の醤油粕を分解できた。この時,低級脂肪酸として酢酸60mM,プロピオン酸20mMを生成し,生成ガス中のメタン含量は約30%,メタン生成速度は最大で25mmol/m^3/dであった。醤油粕の場合,固形分の可溶化が律速段階となっていることが考えられたことから,前段に可溶化槽,後段に海洋性メタン生成菌を集積したメタン生成槽をもつ2段式メタン発酵システムが有効であることが予想された。
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