研究概要 |
前年度までに実施された熱平衡解からの分岐現象の数理解析的研究(水平方向の周期の比は1:√<3>,レイリー数が分岐パラメータ)と対流パターンに対応する分岐曲線のニュートン法による追跡によってつぎのことが明らかになった. (1)臨界レイリー数においては余次元2の分岐が起こり,ロール型の対流パターンと長方形型の対流パターンが分岐すること. (2)分岐したロール型の対流パターンは,追跡した範囲内においては,安定であること. (3)分岐直後の長方形型の対流パターンも安定であるが,あるレイリー数における2次分岐を経て不安定化すること.分岐直後の正六角形状の対流パターンは不安定であるが,長方形型の対流パターンから2次分岐した安定解の枝と結合した後は安定になること. 上記の研究成果は,レイリー数が臨界値より大きい場合には安定な対流パターンが多重に存在することも示している.これを受けて,平成13年度には,典型的なレイリー数に対するパターン選択問題を取り上げ,発展方程式系の直接数値シミュレーションによって選択されるパターンを観察するという立場で研究を堆進した.その結果,つぎのようなことが判明した. (i)臨界値よりやや大きくレイリー数を選ぶと,長方形型パターンが観測されるが、プラントル数Prが小さいとき(例えば,Pr=1)には,長方形型の対流パターンもしばらくの間は持続するものの,いずれはロール型のパターンに変形することが判明した.すなわち,プラントル数が小さいときの,長方形型のパターンが安定に存在する範囲は非常に狭いことが推測される. (ii)プラントル数Prが大きいとき(例えば,Pr=10)には,長方形型の対流パターンが安定に存在することを臨界値よりやや大きなレイリー数については確認した.レイリー数をしだいに大きくすれば対流パターンも変形されてゆくが,上記の(3)で表現されているような正六角形状のパターンへの接続までには至らなかった.
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