研究概要 |
ホランダイト型Bi_xV_8O_<16>に注目し研究を行った.このホランダイト型構造では,V原子は酸素が八面体的に配位し,その稜を互いに共有することでc軸方向に延びるバナジウム二重鎖を形成するが,VO_6二重鎖がc面内に配位することでc軸方向にそって大きな空孔(トンネル)が形成され,Bi原子がそのトンネルサイトを占める.構造から予想されるように,Bi原子にはある程度の組成域(1.6<x<1.8)が存在することが明らかになり,単一相の合成に成功した.Bi_xV_8O_<16>の電気抵抗ρは高温で〜10^<-2>Ωcm程度の低い値となり,一次元的な金属的電気伝導を示すが,1.6<x<1.7について低温までそのまま金属的電気伝導を示し,1.71<x<1.8についてはある温度T_1でρの急激な上昇が観測され,温度誘起の金属-絶縁体転移(一次転移)が起こっていることがこの研究によって初めて明らかになった.この金属絶縁体転移においてバナジウムの価数が3+1/3からはずれるにしたがって金属-絶縁体転移温度T_1の値が急激に減少し,バナジウムの価数が3+1/3の時,すなわちV^<3+>とV^<4+>のモル比が2:1と整数比になる時,絶縁体相が最も安定化されることから,この系の金属-絶縁体転移はバナジウム原子の電荷秩序に起因すると考えられるが,このことは低温X線回折実験によって確認された.金属-絶縁体転移での物性異常は帯磁率χの温度変化にも現れ,転移温度以下でS=1のV^<3+>イオンが,スピンシングレット状態に転移することが^<51>VのNMR等で明らかになり注目されている. また,新しいタイプの一次元強磁性鎖を持つ物質Ca_3RhCoO_6の研究を行い、強磁性イジングスピンが三角格子反強磁性体の部分無秩序相を有した反強磁性相を示すことが中性子回折実験などで初めて明らかになった.
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