研究概要 |
1.量子弾性測定用超高圧試料セルの実用評価 平成12年度の研究において,非磁性超堅材料(MP35N)を用いた超音波量子弾性測定用の一定加重型ピストンシリンダー超高圧試料セルを製作した。実際製作した試料セルは,試料空間(テフロンカプセル内部)の直径φ5を確保する内径φ6の内部シリンダーと内部シリンダーを支える外部シリンダー(外径φ34,全長120mm)から構成される。圧力の印可は,現有の油圧ジャッキで行った。12年度の予備実験では,試料空間内部に3GPaの圧力を発生することに成功した。このセルに,超音波実験に必要な同軸ケーブルを導入するため,圧力保持と低温実験に最適な極細の同軸ケーブル各種の試験を繰り返し,最終的にレークショアー社のSC100型が最適であることが判明した。しかしながら,シールド部分からの圧力漏れが無視できず,最高圧方は1GPaとなった。最高圧力を高めるためには同軸ケーブルを導線に代える必要がある。超音波装置を一部変更し,基本周波数を下げることによって音波の波長を長くし導線を用いることによる高周波の損失を防ぐ工夫を行った。現在,2GPaまで安定に量子弾性を実測できる装置が完成した。また,試料セル空間における圧力媒体の体積を現在より減らす工夫を現在行っているが,これにより予備実験の3GPaも実測において達成できる。 2.強相関電子系における多重極限物性 本年度の研究では以下のテーマについても探求した。単結晶LSCOの低・高ドープ単結晶における超高圧下電気抵抗測定から高温正方晶における超伝導相図の完成および伝導機構の解明を行った。単結晶LSCOの磁場中における量子弾性の精密測定から超伝導転移における臨界指数を見積もった。p波超伝導体Sr_2RuO_4の量子弾性測定から初めて超伝導転移温度の一軸圧力依存性を初めて明らかにした。また,量子弾性から直接時間反転非対称2次元秩序変数の存在を示唆した。
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