研究概要 |
金属イオンと配位子の間に形成される結合は、それぞれ特有の方向、強さ、交換速度をもっており、分子の集合体をコントロールするための有用な構成要素になる。DNAやタンパク質のような生体高分子や、目的に合わせてデザインした有機分子を、鋳型分子や架橋配位子として用いることにより、金属特有の分子集合体をつくる研究を進めた。本年度は、自然分晶する環状亜鉛四核錯体、ホモキラルな二つの三次元ネットワークが相互貫入した銀錯体、化学組成の異なるホモキラルな二つの三次元ネットワークが相互貫入した亜鉛錯体の合成に成功した。最後の例は、二つの3次元(3D)ネットが相互に貫入した構造をもち、相互貫入型金属錯体で自然分晶した最初の例である。120_iの角度で結合した二つのpyhdyl基を有する二座配位子、2, 4-di(4-pyhdyl)-1, 3, 5-triazine(DPT)、とZn(II)により異なる化学組成を持つ二つのキラルな三次元ネットワークが相互に貫入した構造を生じることがX線結晶構造解析より明らかとなった。この構造はCd(II)の場合も同様であったが、Co(II)やNi(II)などの場合は、ジグザクの一次元ポリマー錯体であった。今後、DNAやタンパク質のような生体高分子を鋳型にしたときの、錯形成について検討する予定である。これらの結果は偶然見い出されたものだが,得られた知見をもとに一般性を高めることが今後の課題である。
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