研究概要 |
ニンジン培養細胞から単離されたEn/Spm typeの非自律性因子Tdc1において,transposaseタンパク質が作用するして転移するのに必要な末端配列であるterminal inverted repeats等を残した転移・再挿入が可能である最小な転移因子を作製した。この中にニンジンから得られたphenylalanine ammonia-lyaseプロモーターの紫外線照射および病原菌感染によって強く誘導されるエンハンサー領域をタンデムにつなげたものを導入した。さらに35S-minimalプロモーターにtransposase遺伝子を結合したものを結合し,これをTi-プラスミドpABに導入した。これをアグロバクテリウムを用いてタバコ培養細胞に遺伝子導入し,カナマイシンで選抜し,遺伝子導入タバコ・カルスを150クローン得た。そのカルスを25mg/l,50mg/l,100mg/lのハイグロマイシンを含む固体培地上にまき,これらに対し紫外線ランプを用いて,1日に10分,5日間紫外線照射を行い,その後,連続暗下で培養した。その結果,100mg/lというタバコ培養細胞にとっては高濃度のハイグロマイシンを含む培地で生育してくるカルスが3クローン得られた。そこで,これらカルスにおいてハイグロマイシン耐性遺伝子近傍にエンハンサーを含むTdcが転移しているかどうかをハイグロマイシン耐性遺伝子,エンハンサーおよびTdcの末端配列の塩基配列をプライマーとして調べたが,Tdcは転移していないことがわかった。Tdcが転移していないにもかかわらず,高濃度のハイグロマイシンを含む培地で生育したのは,これらのカルスにおいて,この遺伝子が遺伝子発現が活発に起きているactive siteに挿入されたためと考えられた。
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