研究概要 |
前年度の解析によって得られた昆虫の多様な複雑形態の特徴に着目し,その基本構造生成のメカニズムに関する遺伝子・タンパク質ネットワークの数理モデルを構築して,それらの数理モデルのシミュレーション解析及び理論解析を行なうとともに,昆虫の雌雄間の形態差と進化に関して考察を行なった。 1.昆虫の多様な複雑形態生成のメカニズムに関して,最近のゲノム・プロテオーム科学の大きな進展を背景として,昆虫の形態発現の基礎となるべき遺伝子発現に関する遺伝子・タンパク質ネットワークの数理モデルを,遺伝子とタンパク質,タンパク質とタンパク質の相互作用を考慮して構築した。 2.上記で構築した数理モデルに関して,その微分-差分-代数ダイナミクス,遺伝子・タンパク質ネットワークの安定性や分岐構造に対する転写や翻訳の時間遅延の効果,スイッチング現象を伴なう散逸構造生成などの非線形ダイナミクスについて,シミュレーション解析および理論解析を行なった。 3.最後にこれらの数理モデルが生成する様々な非線形ダイナミクスを前年度の結果と対照するとともに,そのモデル特性と関連深い昆虫標本等を参考にして当該数理モデルが自律生成しうる多様な可能形態についての考察を行なった。さらに,雌雄間で著しい形態差を生じる昆虫を例にして,形態差と進化の問題に関して,特に性淘汰理論やハンディキャップ原理の観点から考察を行なった。
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