研究概要 |
毛細血管内の血流は,観察的研究により定性的には理解されているが,ミクロンオーダーの流動であるため計測が困難で,定量的データはほとんど得られていない。一方,拡大モデルによる流体工学的実験では,計測は可能であるが,生体内のミクロ流動の状況を再現しているとは言い難い。生体内のミクロな血流の定量的理解は,がん細胞の転移の正確な予測などにおいて極めて重要である。これを可能とするために,ミクロな生体組織による生体工学的実験と,流体工学的モデル実験とを融合し,さらに計算機による数値シミュレーションを援用して,新たな解析手法を確立する。この研究は,ミクロな生体流動現象を定量的に理解する新たな学問分野としての「ミクロ生体流体工学」を体系化するための基礎を確立することを目的とする。 初年度の赤血球を用いた実験を異なる条件下で行うとともに,対応する数値解析を行って,実験と数値解析の両面から,ミクロ生体流動モデルの構築を行った。実験装置には,前年度同様,現有の傾斜遠心顕微鏡(倍率1,000倍,回転数10,000rpm)を用いた。回転速度と試料の取り付け角度を変化させながら細胞を観察することにより,赤血球とガラス板間の摩擦特性を計測した。血管内の流動数値解析には,東北大学流体科学研究所のスーパーコンピュータ(現有,SGI社製ORIGIN2000,256CPU)を用いた。実験により得られた細胞間の摩擦特性を数値解析結果と比較することにより,ミクロ生体流動の数学モデルを得た。
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