研究概要 |
本研究は、波浪条件が厳しく、かつ大水深(150m以上)の海域における浮体橋梁の適用性を調査・検討したものである。北海等の波浪条件が極めて厳しい海域においても実績のあるTLP(Tension Leg Platform)は、テンドンにより緊張係留することで鉛直方向の応答を押さえ、かつ水平方向への係留をテンドンの張力の水平方向分力によりおこなうという合理的な構造である。そこで、TLPと同様なテンドンによりセミサブ浮体を緊張係留する形式の浮体基礎を配置し、これに桁を渡す形式の浮体橋梁を考え、その適用性について数値解析により検討をおこなうことを目的とした研究を実施した。 まず、静的安定性の検討に基づき、浮体基礎ならびに橋梁上部構造の基本諸元を決定した後、浮体基礎単体の波浪応答特性に関する数値解析をおこなった.この段階で、橋梁上部工がない場合(質量のみ考慮)の鉛直応答ならびに長周期動揺の検討ができる.そのための剛体モデルに関する特異点分布法プログラムを作成し,その精度検証をおこなった. 次に、橋梁上部構造を導入し、構造系全体を弾性モデルとしてモデル化した.浮体基礎の付加質量も考慮した上で、有限要素法(NASTRAN)により固有値解析ならびに周波数応答解析を実施し、線型重ね合わせに基づく波浪応答解析を実施した。また,流体力のメモリー影響も考慮した時刻歴応答シミュレーションプログラムを開発し,TLP形式の浮体基礎橋梁に対して,波浪の1次外力のみならず,長周期変動漂流力による長周期動揺,ならびに変動風の作用をも含めた,総合的なTLP形式浮体基礎橋梁に対するシミュレーション解析を実施、本形式による長距離海峡横断が技術的には実現可能性の高いことを確認した。
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