研究概要 |
本研究は、超臨界水酸化槽の前段にアルカリ熱分解槽を導入する新しいプロセスを開発し、その実用化の可能性を明らかにすることを目的として実験を行った。具体的には、超臨界水中での2-クロロフェノール(2CP)とフェノールの分解に対するNaOHの添加効果について調べた。実験の結果、NaOHの添加はフェノールに対してはあまり効果がないが、2CPに対しては分解率を増加させる効果が示された。また、NaOHの添加による2CPの分解について温度の影響を調べた結果、亜臨界水中ではNaOHを添加してもあまり効果がないことが明らかになった。2CPの分解後の中間生成物を調べた結果、滞留時間6.7秒の条件で液体中ではフェノール、クレゾール類、2-シクロペンテノン、アセトン、アセトアルデヒドなどが検出された。また、気体中ではメタン(CH_4)と水素(H_2)が主な生成物であった。一方、より短い滞留時間(0.25秒)ではフェノール、クレゾール類以外に二量体生成物である1-クロロジベンゾダイオキシン、ジクロロフェノキシフェノール、2,2'-オキシビスフェノール及び4,4'-オキシビスフェノールなども検出された。また、NaOHの添加による2CP分解に対しで総括反応速度式を求めた。さらに、超臨界水酸化法で塩化物イオンと酸素との共存により促進される反応器の腐食と有害物質の生成を抑制するため、超臨界水酸化反応の前処理として脱塩素のための熱分解槽を導入する組合せプロセスを検討した。実験の結果、従来のSCWOプロセスに比べ、本研究で提案した組合せプロセスのほうでより高い2CPの分解率が得られた。ただし、実際の液状廃棄物の処理においては様々な化学物質が混合しており、本研究により物質によって分解特性やアルカリ添加が大きく異なることも明らかになったため、実用化のためには実際の複合的分解特性について、さらに詳細に検討する必要がある。
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