研究概要 |
層状ペロブスカイト型構造をとる物質群は、超電導、イオン電導、ホールバーニング特性、高周波誘電性等に特異な物性を示すものが多い。本研究の目的は、このような層状化合物に関する電子密度分布を中心とした結晶学的研究を行い、層状ペロブスカイトの多形形成の原理を明らかにし、これをA-B-M-O系(A:アルカリ金属、B:アルカリ土類金属、M:NbまたはTa)のモデル層状構造に適用し、新しい高イオン導電性を示す物質を探索することにある。今年度は最終年度にあたり、LiCa_2Nb_3O_<10>、LiCa_2Ta_3O_<10>、RbCa_2Ta_3O_<10> Rb_3Ta_5O_<14>などの酸化物単結晶をフラックス法によって育成した。イメージプレート単結晶回折計を用いて、一連のAB2C3010型化合物はNbO_6、またはTaO_6八面体3個分の厚さをもつペロブスカイト層が積層した構造であることがわかった。また、Rb_3Ta_5O_<14>については、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の放射光実験施設ビームライン14Aにおいて、放射光を利用した回折データの収集を行った。その結果、新しいサブナノチャンネルをもつ新物質であることを発見した。この系で、単斜晶系の構造が明らかにされたのははじめてである。この物質は新しい3次元イオン導電経路をもつ新イオン導電材料の可能性が期待される.積層様式の研究から偶然に生まれたとはいえ,研究題目どおりに工学的応用が図られそうなきっかけをつかめたことは望外の成果であった.
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