大腸菌の蛋白質合成系に関与する可溶性の蛋白性因子(開始因子、伸長因子、終結因子、アミノアシル合成酵素等)の31種類の因子をクローニング、大量発現、精製を行った。さらに、リボソームも極めて純度のものを単離し、また80種類のtRNAを含む画分を調整した。これらの170種類の分子種から再構築することにより、蛋白質合成活性をもった蛋白質合成系(PUREシステム)の作製に成功した。PUREシステムは、1mlあたり0.2mgの蛋白質の生産が可能であった。現在生体外蛋白質合成系または無細胞蛋白質合成系と称されているものは、すべて細胞を破砕した抽出液に過ぎず、真の意味での生体外蛋白質合成系は申請者の本システムがはじめてである。このシステムは、蛋白質分解酵素や核酸分解酵素を含まず、また実験者がその反応を自由に制御できる点で、大変優れた遺伝子発現システムの構築に成功したといえる。このシステムにより、MS2やQβなどのファージを創製することを試みたが、感染能を有するファージを造り出すことはできなかった。同時の並行して、大腸菌の抽出液を用いたシステムでは、感染能を有するファージが生産された。このことから、こうしたファージのアセンブリーには大腸菌由来の蛋白質が関与していることが、示唆された。
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