研究概要 |
「触媒カセット」の概念は抗体酵素の触媒三つ組み残基(Asp, His, Ser)の研究をして行く過程において生まれた。我々が作製した天然型抗体酵素の中であるものは、非常に短いアミノ酸配列(5残基)で触媒三つ組み残基様構造を持つことが判った。そしてその抗体の酵素活性部位はその5残基と推定された。そこで、我々はこの短い配列を「触媒カセット」と呼び、その化学的および免疫学的機能を検索している。 触媒三つ組み残基は上記のような短い配列のなかにどの程度序在するのかを調べた。その結果、我々が新しく見出したいくつかの天然型抗体酵素の遺伝子解析、および分子モデリングから興味ある事実が判明した。連続した3,5,8,9残基のような短い配列で触媒三つ組み残基様構造が構成されてていた。(勿論、いくつかはかなり長い配列で立体的に触媒三つ組み残基様構造をしている。)通常、酵素の活性サイト(Asp, His, Ser残基からなる)は、こうした短い配列で出来上がるのではなくて、長い配列の中に。たまたま上記三残基が立体的に近い距離に来たときに出来るものである。今回、上記のペプチド(直鎖状:5mer)を合成し、そのペプチダーゼ活性を基質としては人工基質のBoc-Glu-Lys-Lys-MCAを用いて調べたが、酵素活性は認められなかった。この原因としては、直鎖だときっちりした立体構想が取れないこと、また、活性を発揮するための電荷リレーがうまく行かないなどが考えられる。従って、今後はこの点を考慮に入れながらペプチドを設計する必要があろう。
|