研究概要 |
1.ペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウム(II)活性種と1,6-ジイン類から発生するルテナビシクロメタラスクロペンタジエン中間錯体を経由し、不飽和結合と交差付加環化する触媒的カップリングを開発していた過程で、基質としてノルボルネンを用いたさい、ジイン1分子に対してノルボルネン2分子が付加した副生成物が単離された。この新規1:2付加体は、触媒としてインデニルクロロルテニウム(II)活性種を用いることによって、8:1の選択性で主生成物として得ることが出来た。この触媒系で1,6-ジインとビシクロ[3.2.1]オクテノン誘導体を基質とした場合に、X線構造解析が可能な単結晶を得た。構造解析結果は、新規1:2付加体が、1,2-ビス(シクロプロピル)シクロペンテン骨格をもつことを明確に示し、この生成物は、ルテナシクロペンタジエン中間体が、ビス・カルベノイド活性種のルテナビシクロペンタ-1,3,5-トリエンとして挙動し、環状アルケン類とビス・シクロプロパン化反応を起こした結果と見做すことが出来る。 2.4-位に窒素または酸素原子などをもつ1,6-ジエン誘導体も、ノルボルネンに対して同様のビス・シクロプロパン化を起こすこと、環状アルケンとして、ノルボルネン骨格をもつビシクロアルケン誘導体では、効率良くビス・シクロプロパン化生成物を与えることを明らかにした。さらに、シクロペンテンや、ペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウム触媒を用いた場合に、交差付加環化が選択的に進行した2,5-ジヒドロフランも、インデニルルテニウム錯体を触媒とすることによって低収率ながらビス・シクロプロパン化生成物を生じることも明らかにした。 3.ルテナトリエン構造を証明するためのメタラサイクル中間体の単離と構造決定には成功しなかった。
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