研究概要 |
本研究はターフェニルテトラカルボン酸をメソゲンとし,脂肪族アミンを屈曲鎖とする主鎖型ポリイミドを,高圧固相重合法により合成し、その液晶挙動を調べ、液晶より配向させて得た結晶性繊維の延伸挙動を調べ、結晶が可逆に延伸、収縮するという興味ある挙動を見いだした。 この挙動が見られたのは、屈曲鎖炭素数が奇数のものに限られ、高結晶(結晶化度は90%)、高配向(配向秩序度は0.95)でありながら、30%まで延伸でき、しかもその変形は結晶そのものの変形と合致し、また応力除去後には完全にその形状を回復することが認められた。これらの奇数系高分子ではターフェニルメソゲンが相互チルトしながら、結晶化しており、それらが相互に平行になるまで延伸すというメカニズムで可逆な伸縮が起こっていることが、X-線配向フィルムのX-線解析、IR分光法による吸収二色比の解析、また分子間の基底状態コンプレックスに由来する蛍光波長および蛍光寿命による、イミド環とベンゼン環の間での相互作用の解析から、理解された。また、異性状態近似によるコンフォメーション解析より、他の液晶高分子システム、すなわちポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド等にもこの変形モードに関するコンセプトが普遍的に成立することも見いだし、延伸可能な、結晶繊維の作成法に一つの明快な答えを与えた。
|