キチン合成阻害剤のクロルフルアズロンをハスモンヨトウ幼虫に処理し、その後の孵化阻害作用について調べた。この不妊化作用が精子数の減少によるものなのか、幼虫期に処理されたクロルフルアズロンが産下卵まで伝えられ、産下卵のはい発生時にクロルフルアズロンの影響(キチン合成阻害)により末孵化卵となるのか、または未受精のために未孵化卵になるのか検討した。まず、産下卵の胚発育をを詳細に観察し、胚発育がどの時点で止まるのかを調べた。その結果、未孵化卵の大部分(90%以上)は、胚発生の初期段階で発育が止まることを確認した。これは、未孵化がクロルフルアズロンの産下卵への伝搬によるものではないことを示している。また、5齢幼虫へのクロルフルアズロン処理による精子の発育遅延が、精子数の減少をもたらすのか、精子の性質(受精能力)に悪影響を及ぼすかについては、羽化成虫雄から雌に渡される精包中の精子数と孵化卵数とには高い相関があり、雄から雌に渡される精子数が重要であると考えられた。以上のことから、今後は、雄の精子発育のいかなる作用点にクロルフルアズロンが作用するのか明らかにしていきたい。また、5齢幼虫に対するクロルフルアズロン処理は、雄に対する影響が高いことが示されているが、雌の卵巣に対しても影響があることが明らかとなり、今後は雄のみならず雌に対する影響についても検討する必要があると考えられた。
|