研究概要 |
二枚貝の閉殻筋(キャッチ筋)が行う低エネルギー消費で長時間の収縮制御機構は、著名な研究者がその解明を目指したにもかかわらず、50年以上にわたって不明のままとされてきた。最近、申請者らは、二枚貝キャッチ筋につき、キャッチ収縮からの弛緩時に筋細胞内の分子量7,000,000以上の巨大弾性タンパク質twitchinがリン酸化することを発見した。そこで本研究では、twitchinのリン酸化部位を同定するとともに、遺伝子工学的手法でtwitchin分子の構造および機能の特徴を明らかにし、キャッチ筋の収縮制御機構につき、この方面からの解明を目指した。 まず、ムラサキイガイ前足牽引筋(ABRM)のAキナーゼによるリン酸化反応を行ったところ、1モルあたり3モルのリン酸が取り込まれた。次に、リン酸化twitchinのトリプシン完全消化物から単離したリン酸化ペプチドのアミノ酸配列は、RPSLVDVIPDQPTLQHRおよびRPSMSPAPEVと決定され、それぞれ3残基目のセリンがリン酸化していることが明らかにされた。便宜上、これらペプチドをそれぞれD1およびD2とした。 次に、cDNAクローニングの結果、4,536アミノ酸残基のコード領域を含む15.5kbpの塩基配列が決定された。演繹アミノ酸配列のモチーフ構造を解析したところ、キナーゼドメインのほかフィブロネクチン様モチーフとイムノグロブリン様モチーフの繰り返し構造が明らかになった。リン酸化ペプチドD1およびD2は、それぞれN末端から873-889および4,114-4,123残基に位置した。 さらに、ABRMからカルポニン様タンパク質を発見し、本タンパク質がABRMアクトミオシンのMg^<2+>-ATPase活性を阻害すること、また、twitchinのリン酸化部位に結合することを明らかにした。
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