研究概要 |
昨年度,土壌水分のTDR測定値に及ぼす植物根の影響について調べ,現場からサンプリングした根と,砂,黒ボク土との混合材料について,Dobson等の4相あるいは5相モデルを用いて解析を行った。その結果,砂丘砂での水,根,土壌,空気の4相,黒ボク土での水,根,土壌,結合水,空気の5相について各々の体積と誘電率から,混合材料のTDR測定誘電率に対する各要素の感度分析より,根の占有率が大きくなるに従い,両土壌とも,根の影響が大きくなり,5%の根密度,15%のバルク水分量において,TDR誘電率に対し,砂丘砂で26%,黒ボク土で16%の過大評価を与えることを明らかにした。水分換算では砂丘砂で15%,黒ボク土で40%とかなり大きな値を示すことが分かった。 そこで,今年度は,一昨年度より継続している久住高原草地における,TDRによる土壌水分測定値を解析し,BBHモデルを用いて,土壌表層面流出,土壌深層降下流出,土壌内保水,土壌面蒸発散量の年間収支を計算した。その結果,この黒ボク土からなる斜面草地では,全降水量の70%が表層面流出,約30%が蒸発散量,重力排水が約5%以下であることが判明した。このモデルでは,TDR測定土壌水分量に対しフィッティングを行っており,その結果,表層5cmにおける,根密度が5%以上に達する部分を通しての水分の流出量が非常に大きく計算された。これは,混合モデルにより得られた,「根の存在が土壌水分量の過大評価につながる」という結果を裏付けていると言える。しかし,根の水分量は,なだらかではあるが,周りの土壌水分量に影響されて増減することから,厳密な意味での根の影響評価は難しいが,本研究では概略的な値を示すことができた。
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