研究概要 |
大脳皮質や小脳皮質では、ニューロンの樹状突起の主軸が軟膜方向へ伸展し、その周囲にシナプスを形成する末梢枝が多数派生するという共通した構築を示す。このような樹状突起構築の指向性がどのような細胞メカニズムにより形成されるのかを検討する目的で、発達段階の小脳に注目して分子形態学的解析を行った。昨年度は、プルキンエ細胞樹状突起をカルビンジン抗体を用いて、バーグマングリアの放射状突起をグルタミン酸トランスポーターGLAST抗体を用いて免疫組織化学を行い、樹状突起がグリア突起と密着して脳表に伸展していく事実を見い出した(Yamada et al.,2000)。本年度は、このグリア突起から樹状突起の伸展作用を有するセリンが分泌されていることを明らかにした。さらに、その分子機構を探索したところ、バーグマングリアには高濃度のセリン合成酵素3PGDHが発現しているが、プルキンエ細胞では全く発現陰性であった。この事実は、セリンを介するニューロングリア間の代謝的カップリングが、樹状突起の伸展誘導機構になっている可能性を示唆する。
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