研究概要 |
暑熱・寒冷に対する温度調節系は個体を用いて分析してきた。しかし,温度調節系が動作するのに個体が必要か,それとも単離した細胞でも可能かは不明である。本研究では,単離した細胞が温度調節系を形成する能力があるかどうかを探る。もしあれば、環境に対する生体の適応現象を試験管の中で調べることが可能となり、物質レベルの解析も可能となろう。皮膚に分布する温線維や冷線維の細胞体が存在する後根神経節(DRG)を単離し培養すると、その細胞中に温、冷に反応する温度受容細胞があることが最近分かった。この研究では、ラット後根神経節の温・冷受容細胞と脊髄から分離した細胞を多電極培養皿(MED,Multi-Electrode Dish)上に撒き、共培養する。細胞の自発発火を多電極で誘導、増幅し、その出力で人工の温熱効果器(ペルチエ素子)を駆動する生体-人工の混合系(ハイブリッドシステム)を作る。培養中の細胞に加温、冷却刺激を繰り返して加える。もし,温度ストレスが加わった時の培養器の温度変化が温度の刺激の繰り返しで縮小するなら,温度調節を行う神経回路が形成したことを意味する。 本年度は、MED上に細胞を培養し、その電極から神経活動を増幅記録する装置一式を導入した。MED上にある電極の持つ電気的性質、電極が出す雑音、周波数特性を計測し、装置にある増幅器の周波数特性、また神経インパルスの発火頻度計測器、電気刺激の方法等を調べ調整を行った。さらに、培養細胞に加える温度刺激装置、培養皿を加温冷却するペルチエの動作を確認した。DRGを摘出し、酵素処理した後に細胞をMED上に撒いた。その結果、MED状に細胞を培養することが可能となった。しかし、電気活動は、現在の段階では記録されていない。
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