本研究において、疲労、または疲労感の中枢神経メカニズムについて以下の3点を明らかにした。 (1)Poly I : Cによる感染疲労モデル : Ply I : C(1mg/kg)をラット腹腔内に投与したところ、自発運動量(ホームケージ内の回転カゴの回転数)は、投与当日少なくとも1週間にわたって生理食塩水投与群と比較して有意に低下した。 (2)Poly I : Cによる脳内1FN-αおよび5-HTT mRNAの変動 : Poly I : Cの投与後、翌日の脳内1FN-α mRNAをリアルタイムRT-PCR法で定量したところ、視床下内側視索前野(MPO)、外側視索前野(LPO)、大脳皮質、および小脳で増加していた。さらにPoly I : C投与後1週間目でも、MPOでは依然として増加しており、室傍核(PVN)、および腹内側核(VMH)で著明に増加していた。また、5-HTT mRNAは、IFN-α mRNAが増加したのとほとんど同じ部位で、Poly I : C投与の翌日、および1週間後に著明に増加していた。 (3)発熱および活動量低下の条件付けの試み:1日30分の制限の飲水制限をしたラットで、水の代りに条件刺激としてサッカリン水を与え、直後に無条件刺激としてPoly I : Cを腹腔内投与した。その3日後に、サッカリンのみを与えると、数時間にわたって体温が上昇した。この時、自発行動量も、同一ラットで水を与えた日や対照群の活動量と比較して低下していた。 以上から、疲労を誘発する物質として、脳内IFN-αおよびそれによって誘導される5-HTTが重要と考えられ、また、疲労が条件付けされたことから、疲労の神経回路網の存在が示唆された。
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