当研究の目的はレトロウイルス発現クローニング法を用いて、マウスにおける遺伝子相同組換え(HR)に関与するホモロガスリコンビナーゼ遺伝子そのもの、またはその活性化遺伝子を単離することである。実験は、まず最初に、targeting vectorが導入されたときにHRを生ずるとNeomycin耐性遺伝子が発現するように細工したNIH3T3細胞由来のレポーター細胞株を樹立し、その細胞にHR活性の高い細胞であるES細胞およびニワトリDT40細胞由来のcDNAをレトロウイルスを用いて各々発現させた。次に、targeting vectorを導入し、しかるべきcDNA存在下で相同組替えを起こしたクローンをG418存在下で単離するという流れで行った。結果はNeo耐性クローンは全く得られず、NIH3T3細胞においては一つの遺伝子の補充だけではHRを生ぜしめることはできないことが判明した。現在、基底レベルのHR活性が比較的高いと思われるCHO細胞を用いて同様の実験を検討している。場合によっては予め、変異原処理によりランダムに遺伝子を破壊しておいてHRが起こらなくした細胞株を用いて、レトロウイルスによる発現クローニング法でその表現型をレスキューする遺伝子を単離するというようなアプローチも必要かもしれないと考えている。2000年度は当実験の目的遺伝子であるホモロガスリコンビナーゼは得られなかったが、レトロウイルス発現クローニング法を用いた一連の研究により、血球細胞の分化や増殖に関与する、マウスおよびヒトMgcRacGAP遺伝子を単離し、同遺伝子が細胞質分裂にも重要な役割を担っていることを見出した。
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