研究概要 |
実績概要 泌尿・生殖器系へ感染する大腸菌には腸管感染菌とは異なる病原因子があるはずである。その病原因子を特定し、かつ簡便な検出・同定法を案出し、尿路・産道感染大腸菌の治療と予防・対策法を模索した。 急性膀胱炎や腎盂炎から分離された菌株約100株を抽出し、尿路病原因子とみなされる、usp、hly, pap, aer, sfa, cnf, sfaについて、その遺伝子の有無をPCR法にて検索した。その結果、急性膀胱炎の原因菌と同定された菌株の約50%には検査した病原因子が検出された。培養細胞への付着性、侵入性はこれらの病原因子と相関性は見られなかった。細胞侵入性に関わる因子を同定するために、侵入性の強い株と弱い株を用いてサブトラクション・ハイブリダイゼーション法をおこなった。その結果尿路病原大腸菌にもタイプIII型の分泌機構を有するものが、100株中4株に検出され、これが侵入性に関わる因子であることを示唆した。 産婦人科領域で、vaginosisや膣炎から起因菌として分離された菌株、約700株について、臨床症状と臨床所見を合わせてPCR法により解析した。その結果、従来の病原因子を単独でもつもの、複数でもつものなど多様性がおおく、臨床症状の所見とも合致しないものが多くあった。産道系から分離された大腸菌について、既報の病原因子を解析し、血清型を検討した結果、新生児髄膜炎を起こしやすい菌株は産道から検出された。女性性器は、尿路系感染大腸菌を主としてリザバーとしており、分娩時の新生児へ感染させることが明らかになった。
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