研究概要 |
ルビジウム(Rb)は生体および環境において注目されて来なかった。従ってその必須性は不明である。近年、以前には測定できなかった元素が測定可能となった。Rbもそのような元素の一つである。 (1)生体内Rb濃度と分布割合:通常の固形食(Rb含量7.66μg/g)で飼育したICR5週齢♂無処置マウスの各臓器中Rb濃度を、μg/g wet organ、mean±SD(n=5)で示すと;脾13.23±3.21,肝8.62±3.06,膵8.03±0.79,精巣7.60±0.38,胸腺6.89±1.04,肺6.41±0.76,顎下腺6.89±0.60,腎5.23±0.84,骨5.19±0.62,副睾丸5.03±0.96,心筋4.04±0.12,脳3.79±0.22,精嚢2.94±0.48であった。これ以外に皮膚、眼耳鼻組織、爪、体毛など測定していない部分もあるが、どの臓器においても濃度的に大きな差がない。測定した13臓器のRb分布割合を計算すると骨41.9%,肝34.3%,腎5.5%,精巣2.9%,脳2.8%,顎下腺2.5%,脾2.3%,肺2.1%,膵1.7%,心筋1.2%,精嚢1.1%,副睾丸1.1%,胸腺0.6%であった。 (2)低Rb食を給餌したマウスの体内Rb濃度:基礎食(Rb含量0.47μg/g)を1週間与えた場合、上記の結果と比較して、Rb濃度が最も低下した臓器は骨で(1.03±0.57μg/g wet,約1/5)、次いで脾で(7.01±0.98μg/g wet,約1/2)であり、肝、腎、脳、膵、胸腺では変化なく、肺、顎下腺、精嚢では15〜35%増加した。 (3)カリウム(K)とマグネシウム(Mg)欠乏の効果:必須元素であるKとMgを低Rb食から除いたものを1週間与えた。臓器中Rb濃度は低Rb対照群のそれと比し、肝で低下する以外は大きな差はなかった。この実験群における尿中Rb排泄は対照群の約1/20に、糞中排泄は約1/3に低下した。なお、血中Rb濃度は各群間に差はなかった。 上記の実験結果から食事中Rbが減ると、恒常性維持機能が働き、主に骨からRbを動員し、必要な臓器へ運搬して濃度レベルを維持する。排泄は抑制されるが、特に尿からの排泄が低下する。そのようにして正常値を維持すると推定される。従って、Rbは必須であることは示唆されるが、その機能に関しては現段階では不明である。
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