研究概要 |
慢性関節リウマチでは滑膜細胞の増殖とこれに伴う骨・軟骨の破壊が特徴的である。我々はすでにサイクリン依存性キナーゼインヒビター(CDKI)であるp16INK4aの遺伝子導入により、ラットアジュバント関節炎、マウスコラーゲン関節炎の発症を抑制できることを明らかにしてきた。今回は、慢性関節リウマチ患者から分離培養した滑膜細胞にヒトp16INK4aを含む組み換えアデノウイルスAxCAp16あるいは挿入遺伝子を持たないAx1W1を50MOIで導入し、3日後にpoly-A RNAからcDNAプローブを作製し、Atlas human expression Library(Clontech)にハイブリダイズさせることにより遺伝子発現の変化を検討した。なお、対象とした遺伝子は細胞周期や免疫に関係する2352の遺伝子である。 Ax1W1を導入した細胞と比較してAxCAp16を導入した細胞では363の遺伝子発現が2倍以上となり、334の遺伝子発現が1/2以下となった。発現が増強した遺伝子にはMAPK3,GADD45,HSP27,HSP70,HSP90,NF-X1など、一方発現が減少した遺伝子にはMAPKAPK-2,MAPKK5,VCAM-1,IL-17,IL-18などがあった。 以上より、p16INK4a遺伝子の導入により、細胞内シグナル関連遺伝子の発現の増強と減弱、接着分子及びサイトカイン関連遺伝子発現の減少など種々の変化がみられ、遺伝子治療の効果と関連することが推測された。
|