骨髄移植実験による心臓での骨髄細胞由来の心筋細胞の検討 メスのマウスの骨髄をX線照射後に、オスのマウスの骨髄細胞を経静脈的に移植する実験系を用い実験を行った。非侵襲正常心、および心筋傷害モデル心(クリオインジャリーにて作製)を用い、Y染色体を指標に、オスのマウスの骨髄由来の細胞が心筋細胞に分化しているかを経時的に観察した。Y染色体の検出はin situ FISH法を用いた。オス由来細胞が心臓において発現している場合の、その細胞が心筋細胞かどうかの判定は、筋特異的蛋白であるcaveolin-3の抗体を用いて、in situ FISH法との二重染色にて行った。 正常心において、FISH法にて核染される心筋細胞が散在していた。さらに、骨髄細胞移植後の経時的な変化を検討すると、その出現率は、経時的に増加していた。クリオインジャリーにて心筋傷害作成2週後と4週後において検討したが、傷害部位には線維化組織のみが存在し、心筋細胞は認められなかった。傷害早期においては浸潤した炎症細胞はFISH法にて核染され、オス骨髄細胞由来であった。これに対し、正常心と同様に、非傷害部において、FISH法にて核染される心筋細胞を認めた。正常心と傷害心で、このオス骨髄細胞由来と考えられる心筋細胞の出現頻度に差は見られなかった。 また、骨髄移植後GM-CSFを投与したマウスにおいても心筋細胞出現頻度に変化は認められなかった。 以上の所見より、生体において、心筋細胞の一部は骨髄細胞が分化したものである可能性が推定された。この心筋細胞への分化の誘導には心筋傷害の関与は少ないと考えられるが、さらなる検討が必要である。
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