研究概要 |
自閉症の原因遺伝子の単離を目的とし、候補領域である染色体7q32領域D7S530とD7S684間に存在する遺伝子の網羅的インプリンティング解析を行った。 1.新たなる遺伝子の同定 染色体7q32領域D7S530とD7S684間に9個の遺伝子(NRF1,UBE2H,HSPC216,KIAA0265,CPA2,CPA3,CPA1,TSGA14,TSGA13)を新たに同定した.イントロンの存在,アミノ酸のコードなどから遺伝子とは認められなかったが,同一転写産物からの2つ以上のオーバーラップしたESTは各遺伝子間に散在して5カ所に認められた.遺伝子のエクソンからのEST以外に,遺伝子内イントロンから転写されたESTは3カ所に見られた. 2.TSGA14のインプリンティング解析 MESTとTSGA14のゲノム構造のすべてをカバーしたPACクローンの制限酵素地図から,TSGA14はMESTと逆方向に転写され50-kbセントロメア側に存在していることが確認された。TSGA14はTSGA14 l-type、s-type transcriptの2つの転写産物からなり、胎児各組織を用いたRT-PCRによるインプリンティング解析では、胎児の脳,肝,肺,小腸、精巣,腎臓において両TSGA14転写産物は両アレルからほぼ同程度発現しており、インプリンティングを受けていないことが判明した。 3.その他の遺伝子のインプリンティング解析 インプリンティング遺伝子であるMESTを中心として約1.2Mbにわたる領域に存在する遺伝子の網羅的インプリンティング解析を行ったところ、この領域でインプリンティングを受けている遺伝子はMEST,CIT1,CPA3のみであり、その他の遺伝子ではインプリンティングを受けていないことが判明した。以上よりMEST周囲7q32領域はインプリンティングドメインとして強く制御されてはいず,マウスにおけるIGF-II receptor gene(Igf2r)のように独立したインプリンティングシグナルによって制御されていることが示唆された.
|