研究概要 |
Corticotropin-releasing hormone(CRH)は、海馬・扁桃体-室傍核系におけるてんかん発作惹起のkey factorとしても脚光を浴びており、今後、年齢依存性てんかんの病態の解明や治療法の開発のための新たなkey factorとなると考えられる。小児科領域で重要な年齢依存性てんかんにおけるCRHの動態を、他の神経伝達物質(特にセロトニン-キヌレニン系)との関連も含めて、解明するのが本研究の目的である。 1)発育期マウスにおける辺縁系CRHm-RNAの分布 12年度の脳前額断連続標本について、CRHm-RNAの発現の経時的変化の観察を試みたが、in situ hybridazation法の手技が十分なためか、現在、組織学的に再現性のある結果が得られていない。今後手技の検討が必要である。 2)年齢依存性痙攣におけるセロトニン-キヌレニン系の動態 髄液検査を必要とした症例のうち、神経疾患のないことが判明し、同意を得られた36例(2週から15歳)を対象とし、coulochem electrode array systemを用いてトリプトファン,5-hydroxytryptophan,5-hydroxyindole-acetic acid,キヌレニン,tyrosine,3-O-methyl-DOPA,homovanillic acid,3-methoxy-4-hydroxyphenyl glycolの濃度を測定し、発達的変化を検討した。セロトニン代謝産物である5-hydroxyindole-acetic acidと同様にキヌレニンも年齢とともに減少し、発達的変化を示した。 少数例ではあるが、West syndrome(点頭てんかん)等の年齢依存性難治性てんかん患者の髄液を用いてセロトニン-キヌレニン系について検討し、発作がコントロールされた患者の髄液中キヌレニンが増加する傾向にあることを見い出した。
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