研究概要 |
平成12年度および13年度の研究成果をふまえ、心臓血管領域の拡散強調MRIを目的とした高速ラィンスキャン撮像シーケンスの改良と、心筋拡散係数および拡散テンソルの定量的評価を試みた。使用した装置はGE社製Signa CV/i 1.5テスラ,撮像シーケンスは心電図同期ラインスキャン法である(拡散強調MRIの撮影条件:FOV=30cm,フェーズFOV=0.38,スライス厚=8mm,マトリクス=128x64,TR=RR,Te=68msec,VPS=8)。リファレンス画像において、b=2程度の軽いdiffusion gradientを加えると、心腔内の血液アーチファクトが抑制され画質向上に有用であった。心電図R波からの遅延時間に関しては、200-300ミリ秒の収縮期ないし600ミリ秒以降の拡張期に設定するとモーションァーチファクトの少ない心筋の画像が得られた。等速運動の影響を補正しない通常の拡散強調ラインスキャンMRIでは、b値の増加とともに心筋信号は急速に低下し、b=250では心筋は全く確認できなかった。一方、今回開発したバイポーラー型パルスを用いたvelocity compensated(VC)タイプの拡散強調ラインスキャンMRIでは、等速運動による信号低下が補正されるため、b=250においても心筋が明瞭に認められた.ADC値を定量計測するとひと胸壁の骨格筋に関しては0.6-0.8μm^2/msecと妥当な結果が得られた。しかし、ひと心筋では等速運動以外の高次の動きの影響が大きく、ADC値は平均5μm^2/msec前後と水よりも大きい値を示し、心筋ADCの定量評価については今後さらなる検討が必要と思われた。一方、T1強調型のラインスキャンMRIでは、動きによるぶれの少ない非常に鮮明な心筋像が得られ、左室や右室壁の形態評価に臨床有用性が示された。
|