研究概要 |
AML1は多くの白血病で21q22転座に伴う再構成あるいは点突然変異を起こす遺伝子であり、正常造血の発生・分化に重要な役割を担っている。AML1floxマウスとLck-Creトランスジェニックマウスを交配することにより、Tリンパ球特異的にAML1遺伝子を不活化させた。このAML1コンディショナルマウスではDN, DP, CD4 SP, CD8 SPを含む胸腺T細胞が激減していたが、これはDN3(CD25(+), CD44(-))からDN4(CD25(-), CD44(-))への分化障害の結果であると考えられた。脾臓ではB細胞は正常に保たれていたが、CD4及びCD8 SP細胞は低下していた。TCRβの発現はCD8 SP細胞では保たれていたがCD4 SP細胞では低下しており、CD4 SP細胞の分化障害が存在すると考えられた。抗CD3抗体を用いた検討では、AML1コンディショナルマウスではDP細胞のnegative selectionが観察されず、AML1がDP細胞のnegative selectionに重要な役割を担っていることが明らかになった。さらに、抗CD3抗体及びIL-2で刺激した際のCD4及びCD8 SP細胞の増殖もAML1コンディショナルマウスでは障害されていた。最後に、AML1コンディショナルマウスでは脾臓の胚中心の形成が著しく障害されており、IgG1, IgG2a, IgG2b, IgAの産生が低下しIgMの産生は増加していた。これらの表現型は、脾臓におけるCD4 SP細胞とB細胞の相互作用の障害によりB細胞のクラススイッチが正常に営まれないことを示している。AML1はT細胞分化の各段階で重要な役割を担っていると結論された。
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