研究概要 |
STAYsは、インターロイキン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、G-CSFなどの造血因子やEGFなどの増殖因子の細胞内シグナル伝達に関わる重要な分子の一つである。現在までの検討によりSTAT3はc-mycやサイクリンD1などの発現誘導を介して細胞増殖を誘導し、同時にBcl-2やBcl-XLなどの発現を制御することにより細胞のアポトーシスを阻害することが明らかにされている。我々は、ユビキチンが造血幹細胞の増殖を抑制することを見い出していたが、この作用がユビキチンがプロテアソーム依存性にSTAT3を崩壊させ血液細胞の増殖抑制やアポトーシスを引き起こすことを見い出し、造血細胞におけるSTAT3の重要性を明らかにした。さらに、我々は、がん遺伝子v-Srcによる腫瘍性増殖にも、rasばかりでなくSTAT3がサイクリンD2、サイクリンE、c-mycの発現を誘導し、腫瘍性増殖に関与していることを明らかにした。 我々は、すでにSTAT1,3,5,6のfull-length cDNAの3'末端に合成型エストロゲン受容体のリガンド結合領域を融合させたキメラ分子の発現ベクターの作成を完了し、STAT1,3,5,6と合成型エストロゲン受容体のキメラ分子は、そのリガンドである4-OH tamoxifenの刺激に反応して各STATの認識配列を組み込んだルシフェラーゼのreporter geneを活性化することを明らかにしている。現在、マウス骨髄細胞にSTAT1/ER、STAT3/ER、STAT5/ER、STAT6/ERを発現するretrovirusを感染させた後、4-OH tamoxifen単独存在下あるいは各種の造血因子と併用下で培養し、造血幹細胞の増幅について検討中である。
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