研究概要 |
本研究では、glioma細胞におけるp53遺伝子変異の変化の生物学的悪性度に与える影響を検討するため、細胞の増殖能や遺伝子解析を行い、glioblastomaに対する放射線化学療法の治療効果の改善を目的としている。平成12年度はp53の状態により、抗がん剤や放射線に対する感受性の違いが確認され報告した(Tsuchiya et al.Hokkaido J Med Sci.2000,Ikeda et al.Hokkaido J Med Sci 2000)。平成13年度は、さらにp53遺伝子の状態と血管新生因子の発現との関連を見た。 1.まず、gliobalstoma cell line16種における、血管新生因子VEGF,HGF,b FGF,uPAの発現を検討した。その結果、VEGFは12細胞株で、uPAは6株、bFGFは3株、HGFはl株において発現が確認された。 2.この結果とnude mouseにおけるtumorigenisityの関連を検討すると、血管新生因子とtumorigenisityには強い相関がみられた。 3.一方、血管新生因子の発現とp53,p16,p14/ARF,PTENといった癌抑制遺伝子の状態との関連は見られなかった。 4.さらに、温度感受性変異p53(34℃wild type,37℃でmutant type)を持つ細胞株LN382Tを用いて、p53機能に伴うVEGFの発現の変化をみところ、放射線照射によりwild type p53の状態ではmutant p53の状態よりVEGFの発現が強く抑制された。一方、抗癌剤投与によりVEGFの発現は増幅され、これはp53の状態に無関係であった。 以上から、p53遺伝子異常は細胞の増殖能、化学療法、放射線療法の感受性に影響を与えるのみならず、血管新生因子の発現にも影響を与え、これにより、腫瘍の悪性度、治療効果を規定する因子であると考えられた。
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