研究概要 |
ヒト細胞においては、ターゲットインテグレーションが生じる頻度は極めて低く、従来in vitroでの遺伝子破壊は技術的に難しいと考えられてきた。しかし、1998年頃より、ヒト大腸癌培養細胞を用いた遺伝子破壊とその有用性が少数のグループによって報告されており、決して不可能ではないことが証明されている。私達は細胞周期関連遺伝子のヒト脳腫瘍細胞における機能を正確に解析するため、これらを順次破壊することを計画しているが、遂行にあたり様々な技術的問題点が生じることは予想される。今回の萌芽研究ではU87MGヒトグリオーマ細胞(可視的な染色体変化はない細胞。p53遺伝子は正常。p16遺伝子の欠失あり)を用いて、分裂期チェックポイントを制御していると考えられているmad2遺伝子のコンディショナルミュータント(培養途中に特定の遺伝子のON/OFFを制御することができる変異体)を作成し、本遺伝子のヒト細胞における機能の解析ならびに放射線照射、抗がん剤に対する感受性の変化について調べることを目的として研究を行った。現時点でmad2のコンディショナルミュ-タントは完成していないが,ドミナントネガティブにmad2の機能を抑制することのできる発現系が構築できており,このミュータントを定常的に発現する細胞を現在作成中である。本細胞を用いて分裂期チェックポイントに異常をきたした細胞の形質を検討する予定である。
|