研究概要 |
RA患者より手術中に採取した滑膜組織から確立した滑膜線維芽細胞培養系(SFB)を用いた。まずIL-1(1ng/ml),TNF-α(10ng/ml)により刺激後、炎症状態を惹起し、この系にMTX(日本レダリー株式会社より供与)を0,10^<-6>,10^<-7>,10^<-8>Mの濃度で投与し、6日間培養した。TUNEL染色後、DNA断片化を生じたSFB数を算出したところ、陽性細胞数はMTX投与後6日でピークに達し、用量依存的に細胞死を誘導した(それぞれ0.58,1.21,11.08,15.28%)。サイトカイン無刺激のものにはほとんど細胞死は誘導されなかった(それぞれ0.09,0.97,0.61,1.41%)。DNA ladder法ではladder patternというよりはむしろスメアに近い像を示し、透過型電顕による超微形態学的観察でも、MTX10^<-6>M処理後の細胞は核の濃縮、細胞の収縮といった典型的なアポトーシス像はほとんど認めず、核および細胞質の崩壊を伴うネクローシス像を呈した。また、SFBはサイトカイン刺激によりNO産生が亢進すること、MTX投与後72時間では有意にNO産生が抑制されていることが培養液のELISA法によって明らかとなった。 次に、コラーゲン関節炎を惹起したC57Bl/6マウスに300mg/kgのMTXを週1回筋肉内投与すると、関節炎スコアは激減し、著効を示した。一方、p53 knockout mouseに関節炎を誘導し、同様にMTXを投与したが、やはり同様の効果を示した。MTX投与後1週における組織標本のTUNEL染色では、滑膜組織内にTUNEL陽性の滑膜細胞が認められた。以上の結果から、MTXのRA滑膜炎に対する効果発現はアポトーシスというよりはむしろ炎症性滑膜細胞のネクローシス誘導によるものであり、細胞死誘導効果はp53 independentに生じるものと考えられた。
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