研究概要 |
ラット軟骨肉腫由来細胞株RCSから2種のalternative splicingによるものと思われるアイソフォームを同定した。RCS細胞は豊富にCart1を発現するにも関わらず、Cart1を含めたpaired-classホメオ蛋白のDNA結合配列であるATTANNNTAATを組み込んだルシフェラーゼアッセイではその活性を上昇させなかった。我々はこの現象は前記のアイソフォームとの競合的2量体形成にもとずくものではないかと推定した。 そこでまずCart1の機能ドメインの同定を試みた。GAL4アッセイから転写活性ドメインはホメオドメインのC末に存在し、核移行シグナルはホメオドメインの両端の2ケ所に存在することを確認した。また野生型の転写活性能をN,C末のフラグメントは濃度依存性に抑制した。In vivo,two-hybrid法による結合ドメインの解析から、Cart1のN,C末はそれぞれ直接に蛋白-蛋白で結合することが判明した。しかし、各種細胞株や各時期のマウス胎仔を使ったRT-PCRではRCS細胞から同定された2種類のスプライシングバリアントは細胞株の中でも数種のみに発現していた。 結論として、Cart1はそのN,C末がそれぞれC,N末に会合することで、2量体を形成し、胎生期の四肢発生や軟骨分化を制御しているものと推測された。そして腫瘍細胞のみで発現する2種類のスプライシングバリアントフォームは野生型の活性をドミナントネガティブ的に作用することで、軟骨分化を抑制している可能性が示唆された。今後さらに検討を重ねることで軟骨肉腫の腫瘍化メカニズムの解明にもつながるものと考えられる。 以上の結果は、国内外の学会に発表するとともに(日本整形外科基礎学術集会、アメリカ内分泌学会)、現在論文投稿に向けて準備中である。
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