研究概要 |
前年度の検討に引き続き機能的ペプチドを用いた変異p53蛋白の活性化、殺細胞効果と癌治療への応用の検討を行った。 1)ペプチドの作成 p53C末端(アミノ酸361-382)のアミノ酸配列をもつペプチドを作成、また、コントロールペプチドは、22アミノ酸に含まれるヒスチジン(His)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)をアラニン(Ala)に変異させたペプチドを作成した。細胞膜貫通システムは、アンテナペディアを使用した。 2)DNA binding assay 精製p53蛋白(GST-p53)は、p53のコドン175がアルギニン(Arg)からヒスチジン(His)に変異している構造的変異R175H、また、コドン273がアルギニン(Arg)からヒスチジン(His)に変異している機能的変異A273Hを用いた。コントロールとしてWild-typep53を用いた。 p53C末端ペプチドでは、p53-A273Hは、Wild-type p53とほぼ同様のDNA結合能を認めたが、p53-R175Hは、p53-R273Hと比し、特異的な結合が弱く見られた。 以上より、精製p53蚤白上では、機能上、構造上の変異であってもP53C末端ペプチドがDNA結合能を回復することがわかった。 3)細胞レベルでの効果 細胞株CW678(R175H),SW480(R273H),BL60(R282W),HL60(p53-)におけるp53C末端ペプチドの効果を検討したところ,SW480の増殖が30%以上抑えられた。CW678も増殖は抑制されたが、15%以下であった。HL60では、ペプチドの影響は受けなかった。AnnexinV stainingでの検討ではアポトーシスの誘導が確認された。 以上p53C末端ペプチドのがん細胞の殺細胞効果は確認されたが,正常細胞への影響が今後の検討課題である.
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